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【ネタバレあり】ダークナイト論1

クリストファーノーランの作品を解説するシリーズ。ダークナイト三部作の解説を書いていく。ビギンズ~ダークナイト概要編。以降ネタバレだらけなので注意。

ビギンズ

バットマンビギンズでは、特に解説するようなこともなく淡々と物語は進んでいく。後にダークナイトにつながるいろんな伏線は、この時点ではありがちな映画の一シーンとして流せてしまう。既存のバットマンから比べれば、前日譚ものとして人間ドラマ寄りにシフトしてきたのは感じられるけどね。

 

バットマンがいると町が荒れる」

 

という、以後何度も繰り返される、シリーズを貫く前提となるくだりは何度も登場する。しかし、それでも悩みながら悪に立ち向かうぜ!そしてバットマンはレイチェルにだけ正体を明かし、町が平和になったら引退して結婚すると宣言する、という割とよくある終わり方な気がする。

 

で結局のところ淡々と悪に勝っておしまい。

 

そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

明らかにビギンズのラストシーン時点でダークナイトへのつながりは意識されていて、そしてダークナイト以降ではいきなりこの辺の絶妙な人間ドラマ感が、そのままストーリーに直結する最重要ポイントに変化するからびっくりである。

 

ダークナイト、ライジングと見終えたら、ぜひもう一度ビギンズに戻って見返してみましょ。初見ではヒーロー映画の前日譚、プロローグにすぎなかったはずのビギンズが、壮絶なドラマの一篇として鳥肌たちまくります。

 

 

ダークナイト
ダークナイトでは物語冒頭から、ブルースはジレンマに悩まされることになる。

  • ビギンズでもたびたび描かれた"バットマンがいると治安が悪くなる"を象徴するキャラとしてジョーカーが現れる。
  • ただしジョーカーは強くて怪物寄りの存在なので、同じく人間離れしたバットマンが戦わないと(公権力=警察検察だけでは)倒せない。

ブルースの考える理想は、住民たちが悪を許さず自発的に立ち向かう平和である。悪を許さない存在の象徴、ロールモデルとしてバットマンになったものの、住民はバットマンに頼ってしまうので堕落した町は一向に良くならない。これでは前作ボスの言うとおりのダメな街である。前作ラストではバットマンとして戦い続ける気満々だったブルースだが、ここへきて戦うor引退の間で悩むことになる。このままでは鶏と卵のどちらが先か?問題で、いつまでたっても同じところをぐるぐる回ることになる。

ところが幸いにもブルースには、ほんの少しだけ引退に向かい始められる希望がある。

  • バットマンに替わる正義の人としてハービーデントが現れる。
  • レイチェルと結婚するという引退後の居場所がある。(とブルースは思っている。レイチェルには新カレがいるけど。)

デントは検事という公権力なので、バットマンが活躍している期間のように住民はデントにまかせっきりとはならない。悪を許さず"デントを支持する"という住民たちの意思が平和を作るのである。これはまさにブルースが理想とする町の姿である。

 

もちろん目の前にジョーカーという脅威が迫っている以上、すぐにやーめたって引退するわけにはいかないんだけど、デントやゴードンとの共闘を通じて少しずつ引退に向かっていくことができそう。最終的に、あとジョーカーだけ倒したら引退すると決める。

 

 


その最後の作戦でこの仕打ちである。引退後の居場所も引き継ぎ先も、二つの希望をどちらも失ってしまうのである。せっかくジョーカーを倒したにも関わらず、引退の道を絶たれてしまう。苦肉の策としてバットマンに依らない平和(バットマンに依らない=今後ジョーカーみたいなものを生み出さない、合法的で住民の意思に依る平和)を作るための象徴としてデントを英雄化する。こうして夜のバットマン活動は不要になり、ブルースの理想に近い町になったにも関わらず、ブルースはバットマンの中身(の幽霊部員)でいることを辞めることは出来ない。

ビギンズではなんとなーく悪との対立要因だった"バットマンの戦う理由"が、ここへきてめちゃくちゃ重要な"バットマンの引退"というキーにすり替わっていく。

 

さて、劇中でバットマンの引退を必死で阻止してたやつがいたな?

 

次の記事では名演技で一世を風靡したジョーカー先生について、実は悪役として魅力的なだけでなく、三部作通してのストーリー上も超重要キャラであるという話をします。

【ネタバレあり】ダークナイト論2 - tomatojuicer222's diary