ASCASO社のエスプレッソマシンについてマニュアル和訳を勝手に進めています

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【ネタバレあり】ダークナイト論2

前回、ダークナイトバットマンの引退をめぐる映画であり、最後は"バットマンが引退できなくなってしまった事"をあげた。さて、劇中でバットマンの引退を必死で阻止してたヤツがいるんだけど、だーれだ??今回は我らがジョーカー先生に関するお話です。

前記事はこちら

【ネタバレあり】ダークナイト論1 - tomatojuicer222's diary

ジョーカー先生メインの記事を書くにあたって注意点※
ノーラン作品って、あれれ?今のおかしくね?みたいな所が満載で、せっかく面白いのにもうちょっと深く作りこんでくれよ!みたいな批判をよく目にする。一見すると作りこみの甘さや矛盾に見えるこれらのひっかかりだけど、劇中にはちゃんと正解が用意されている。(本当に説明のつかないミスみたいなものって今のところひとつも発見できない。)重要な箇所をあえて劇中で明言せず、ただしちょっとだけひっかかりを残すことで"ここを解決すれば正解があるよ"と示す手法なのかなと思っている。同じやり方でインセプションなんかも作られてるはず。(バットマンの本当のテーマははじめっから引退!という主張も、これらのつなぎ合わせで見えてきたもの。)

ジョーカー先生はただでさえ嘘つきな上に気まぐれさんなので、先生の真意を図ろうと思うともうぐちゃぐちゃ。そこで嘘つきな先生の真意を考える際のヒントとして、このような引っかかりを利用していく。セリフや行動から真意が読みとれない先生だが、引っかかりの場所にきちんと正解が隠してあると考える。
嘘つきだったり、目的もなく破壊や混乱を楽しむ、みたいな設定のせいか、不可解な行動をしても観客にスルーされてしまうジョーカー先生。たしかに"きまぐれだろ"とか"趣味""怖がらせるため"で説明できてしまう場面も多い。しかしよく考えるといくら奇行種と名高いジョーカー先生でもおかしな事だらけ。

  1. 冒頭の銀行強盗の目的は?中盤でマフィアの大金を燃やすような、お金に興味のない先生が銀行強盗をしたわけは何でしょう?
  2. ビリヤード場のシーンの意味は?他のシーンと全くつながりのない、先生とマフィアの小競り合いの意味は?
  3. なぜマフィアの依頼を受けた?マフィアとつるまなくても、大半の事件は自分の手下達で実行できたはず。
  4. なぜマフィアから報酬をもらえた?バットマンを殺すお仕事だったはずでは?
  5. バットマン名乗り出ろ→後半はバットマンの正体を明かすやつを殺そうとする。方針が180度変わるわけは?気まぐれなの?目的があったの?

これらの点をしっかり解決していくと、先生の本当の目的が見えてくる。

    1.冒頭の銀行強盗の目的は?
これは比較的簡単。単刀直入にいうなら、マフィアに接近するため。後の"グループセラピー"、そしてその後のマフィア乗っ取りのための派手めな自己紹介と考えると納得がいく。


    2.ビリヤード場のシーンの意味は?
マフィアが先生と手を組む決断をするのは、バットマンがラウを連れ戻したため。マフィアは先生からの脅しに屈したわけではない。となるとマフィアの一人を脅して殺すこのシーン、マフィアを揺さぶる様な効果はなかったと言える。ストーリー的に他とすっぱり切り離されている。
一つ目の案として、先生の気まぐれっぷりをアピールするためのシーンだと解釈している。後述するが、このシーン以外の先生の行動は実は非常に計算されて一貫性があり、きまぐれな狂人だとはととても思えない。しかしこの様な"残酷なだけで他とつながりがないシーン"をほんの一か所入れることで"こいつはやべー"と観客に思わせる。もし上映中に上記1-5の様な疑問がふと頭をよぎっても"きっとジョーカーの残酷趣味/気まぐれだろ"で済んでしまう。(実は重要なシーンでも)考え込まずに集中できてしまう。その結果、当記事の様にあとあとじっくり考えこむ楽しみを取っておいてくれる。そんな効果を狙って入れた、先生が唯一、本当に気まぐれだったシーン。
ただし二つ目の案として、4.に別解を書いてあるので納得いかない人はそちらもどうぞ。

    3.なぜマフィアの依頼を受けた?
ここが最大のポイント。先生程の実力があればストーリー上の事件は全て自分で集めた下っ端と実行できそう。わざわざ銀行強盗までしてマフィアの気を引き、つるむ必要があったのだろうか。結局マフィアからの報酬は燃やしちゃうわけだし、マフィアの資産目当てではない。

実はマフィアと組むことは、多少使える人手が増えるという以外にバットマンの相手を自分一人に絞らせる効果がある。バットマンは冒頭で、一人の悪党より組織犯罪の撲滅が先と言ってジョーカーを軽視している。マフィアもはじめは、どうせ小物だと言ってジョーカーは放置しようとする。つまり物語冒頭、みんなジョーカーなんて眼中にないのだ。
自分はバットマンのライバルとして輝ける!という確信があったジョーカーとしては、つまらない金稼ぎでバットマンを一人占めするマフィアに嫉妬していた。マフィアと手を組みバットマン対策を任されることで、(マフィアをおとなしくさせ)結果バットマンの目を自分に向ける事に成功する。さらに4.で後述するが、そのままマフィアを乗っ取ることで、ゴッサムの構造を公権力VSマフィアからバットマンVS怪物に変えてしまう。

    4.なぜマフィアから報酬をもらえた?
グループセラピーでバットマンを殺すと言い、報酬として全資産の半分を要求した。しかし現実に報酬をもらうシーンは、ラウを脱獄させ資金を取り返した段階である。バットマンを殺す契約はどうなった?先生なんでお金もらってんの?これに関しては二つの解釈ができる。


A案

もともとマフィアはラウから資金が戻ればよかった。バットマンは倒せればラッキー程度。(資産が戻った時点で支払う契約だった)

→これは考えにくい。むしろマフィア的には、バットマンさえいなくなればまた稼げばよいって考えてそう。グループセラーピーなんかでわかるように、それくらいバットマンを恐れてた。


B案

ラウを脱獄させた段階で何かが起こり、なんやかんやうやむやなうちに報酬をもらった。

以下の理由からB案だと考えるんだけど、ではそこで起こったなんやかんやとは?

 


これは報酬の山を燃やすシーンの直前、病院でのゴードンとマローニの会話が手掛かりになる。マローニはジョーカー先生の居所を教え、しかしその場を警察が押さえるようなシーンはなく、一足遅かった!ってのである。

 

「居場所を教えるけど逮捕はできなかった」つまり、

 

このくだりは映画的に「全部ムダ」なシーンにみえる。

 

無駄なシーンは無いという前提にたつと、なにか別の意味があるのである。

 

そして肝心の受け渡しのシーン、マローニ配下は受け渡し場所に来ていないらしい。会話のキャッチボールにすらならない短いセリフの応酬でこの辺が表現されている。しかし先に述べた"(バットマンを殺せていないのに)先生が報酬を受け取る"という不自然さと合わせると絶対にスルーしてはいけない箇所なのである。

 

マローニはジョーカーの居場所を警察に教え、自分の部下は送り込んでいない。これが意味するところは"マローニがジョーカーを恐れ手を引いた"である。報酬は払うからもう関わらないでくれ(あわよくば警察さんジョーカー捕まえてくれ)である。

 


残った方のマフィアのリーダーは、ジョーカーの事を気に入ってる様子。(見た目程おかしい奴じゃないみたいだなとか言ってるし、全資産は自分のグループが好きにできる。マローニ派が手を引いたことで、事件前よりむしろ手元に残るお金は増えてるんじゃないかな?)

 

気を良くしたリーダーが"へいブラザー、山分けしようぜ"みたいなノリでジョーカーに半分渡したというのが正解なんじゃないだろうか。

 

(こーしてみると前述2.のビリヤード場のシーンの解釈にも別の可能性が出てくる。グループセラピー時点でジョーカーを本気で嫌ってそうだった有力派閥のボスを、事前に殺してるシーンとなる。)

 

ちなみにこのシーンで、先生の目的は始めからマフィアの乗っ取りだったと宣言する。計画を立てるやつは嫌い、支配に意味はない、と散々デントを煽る先生だが、最初の強盗からここまで全部計画通り。先生ったらとんだウソつきさんめ!

 


    5.バットマン名乗り出ろ→後半方針が180度変わるわけは?
方針が変わるタイミングで起こったことは、ジョーカーがマフィアの手を離れ、マフィアを動かす側に立ったことである。

 

ここまでは前述の様にマフィア乗っ取りのための計画、ここ以降の行動こそが、ジョーカー先生の本来の目的だと言える。

 

バットマンがいないと自分はちんけなコソ泥に逆戻りと、留置場のシーンで語っている。3.で書いた様に先生はわざわざマフィアを使って自分に注目させるほど、始めからバットマンに執着している。この発言はうそつきなジョーカーの数少ない本心だと考えられる。

 


逆にいうとこれ以前の"名乗り出ろ"イベントは、本来の目的ではなくマフィアと動きを共にする用の表向きの方針である。

 

つまり先生は、気まぐれで方針を変えたわけではない。はじめからバットマンの正体は明かしたくないし殺したくない。ずっと終わらない追いかけっこを続けていたい。

"名乗り出ろ"はマフィアを信用させて乗っ取りを実行するための、マフィア向けパフォーマンス的な意味合いが大きいイベントなのである。実は別にもう一つ目的があるんだけど、それは次の記事で。

 


    まとめ
ここまでの引っかかりの答えを見つけたことで、不可解な行動が整理できる。

  • 先生はバットマンが大好き。ちゃんと相手してもらうためにマフィアを乗っ取った。
  • マフィア乗っ取り以降のバットマンと火遊びが、本当にやりたかった事。

先生は目的もなく気まぐれに混乱を楽しむみたいなキャラと思われがちだが、本当の目的は"バットマンと遊ぶこと"であり非常にシンプルで明確な目的をもって一貫した立場をとっている。

 

このこと自体は留置場やビル上の戦いシーンで本人も何度も発言している。しかし嘘つきな先生の話、本当かどうか観客は確定できない。重要なのはここまでの考察を通して

  • この発言が確かに本心であると確定でき
  • 全編を通じて、全ての行動が隙なくこの目的に沿っている

という二点である。

 

 

ジョーカーの目的ははじめっから終わりまでバットマンを煽ること、なのである。こうなってくると、デントとレイチェルの二人を人質に選んだのも単なる偶然や"ちょっと悩ませて苦しませてやろう"程度の理由ではないのでは?

 

はじめっからバットマンの弱点として、目を付けられていたのでは?

 

そんなわけで次記事では引退をめぐる三部作の中で、ジョーカー先生の功績がどんな位置づけであり、先生がどれだけすばらしい仕事したかって事をお話します。

【ネタバレあり】ダークナイト論3 - tomatojuicer222's diary