【感想文】すずめの戸締まり【ネタバレ・考察】
ネタバレありまくりの感想文です。
後半に向けて荒波のように激しくなっていくストーリー、あまりの圧巻に受け止め切れない人もいたと思います。我々はどう解釈して気持ちを整理すれば良いのか。そんな考察っぽいことも書いています。
自己紹介
本ブログでは、ゲームや映画の感想文や、その延長としてガジェットの製品レビューなどやってます。コスパ最強のオフィスチェアや自宅のスマートロック化計画の記事が人気です。過去に書いた感想文たちはこちら
率直な感想
自分の中では君の名はから続く三部作の3作目みたいな感じに思っていて、その点は期待を大幅に超える圧巻の締め方で大満足でした。
反面インフレを重ねたスタンドバトルに胃が痛いというか、もうちょいライトなエンタメを期待していた部分もある。
「ウヒョー最高だぜ〜早速2回目予約したった!!!」という、前2作視聴後みたいな浮かれハッピーモードにはなれないんですよね。緊張しすぎて今朝から筋肉痛ですよ。
観るのにちょっと勇気がいる、適切なたとえではないがホラー映画に近いようなカロリーを消費する作品でした。
あらすじ
寂れた場所にはその土地で暮らしていた人達の思念が残っていて、その記憶パワーを利用して災害を封印・未然に防ごうぜ、というのが本作主人公の能力。
隕石に対する宮水神社とか、龍神に対する稲荷系神社とか、災害に対抗する信仰をファンタジー能力として描くという構造は前2作そのままですね。
ここは過去作が好きならすんなり入り込めると思う。
キャラ
主人公チームがかわいいんですよ。
すずめはキービジュみたいなしかめっ面はあんまりしてなくて、動画で見ると5割増で魅力が増すような元気系の主人公です。
陰キャ女子高生がイケメンに出会って世界を知る話、みたいなのを想像していたら全然違った。
そしてイケメンも猫もイケメン2もおねぇさんも予告で見たのとなんか違う(いい意味)。正直予告でなんかあんまり好きな感じじゃないかなーと思ってたんだけど、予告と違って全部良かった。
キャラの魅力は全体的にめちゃくちゃ良かったです。声優の演技もよい。
結末と考察
で、なんやかんやありつつその能力で大規模災害を防ぐ。天気の子みたいにモヤる要素もなくしっかりハッピーエンド、、、
というような感じで大まかには前2作と似たような構造なんですが、決して焼き直しではないんですよ。
ストーリー全体で言うと実はまだ半分から6割くらい?
でそこからさらにものすげー壮大な伏線というか、デカすぎて見えない釣り針がずっと目の前にぶら下がってたみたいなのが明らかになっていきます。
3.11絡みの終盤戦
どういうことかと言うと、この映画自体が現実に起こった3.11の地震に対する鎮魂歌になっているんですよ。
古くから続く祭りとか儀式って、悪いものを鎮めるとか記憶を継承するとか、そういう民俗学っぽい起源がありがちじゃないですか。知らんけど。
この映画はそういう儀式をお話の中に描くというよりも、映画自体を鎮魂の儀式そのものにしてしまおうというチャレンジに見えるんですよ。エンタメ映画のフリしてがっつり供養ムービーですよこれは。
昔の人は祟を鎮めるために社を作って、お参りしたり祭りをしたりじゃないですか。そういう感じで「映画で鎮めよう、大切なことを伝承しよう」という。
それも匂わせとか、深く考察すればそういう意図があるのかも?みたいな話じゃなく、直接的な描写としてそう言い切っている。
宮崎からスタートした旅は序〜中盤ストーリーの流れから、ロードムービーとして結構スムーズに北上していくんですよ。そんなファンタジーのお話の中にありながら、いつの間にか現実に起こった地震の話を見せられている。
現実とつながったとこでいろんな伏線が一気に回収されて、辛い記憶を乗り越えていく人間たちの健気な強さを描き切るクライマックスは圧巻でした。この辺の虚構と現実が入り混じるトリッキーな構造は今作1番の目玉の部分であり、文章では到底説明しきれないのでぜひ自分の目で見てください。
過去作で繰り返してきた「災害vsそれを乗り越える人間の強さ」みたいな事を、「現実の災害vs映画芸術」でやろうとしてる。
このメタい構造が壮大すぎて本当にお見事としか言いようがなくとにかく凄かった。間違いなく名作と言えると思います。
現実のツラみをフィクション中で消化するのがエンタメの役割かもしれない
ドラゴンクエストの映画版とか、龍とそばかすの姫とか、架空世界の出来事を現実で回収しようとする作品は何度かあって、そのたびに結構世間から怒られてますよね。
それに対して真逆のアプローチというか、現実の出来事をエンタメで鎮めましょうって珍しくないですか?
珍しいといいつつ、エンタメの本質ってそういうことなんだろうなとは理解しています。しかしメタファーとかじゃなくこんなにしっかりバッチリ直接的に明言しながら、ギリギリエンタメ側ですよーという質感を維持している作品は初めて見たなという感じで衝撃でした。
がっつりシリアスであれば戦争映画とかいくらでもありそうだけどね。
このクオリティのクソでか感情を受け止めるのはキツい
同時に、凄いのは凄いんだが意識高すぎてキツいなっていう感想も持ちました。私は3月11日に黙祷とかも特にしないタイプなので、いきなりクソでかお気持ちパワーを食らってビビってしまった。
震災当時そこに暮らしていた人たちの声を、あのクソつよ監督が作る世界最強の映像表現としてぶつけてくるですよ、そんなん超怖いって。全体像に想像も及ばないようなクソデカイものを目の当たりにした時の怖さです。底も見えないような深海の写真ってなんか怖いじゃないですか、あれ。
口噛み酒とか銃刀法違反とかにやいのやいの言いながら、ショートカットの三葉かわいいとかいや俺は陽菜さん派だとかやってた頃が幸せだったわ。
余談 今作のお色気シーンについて
あ、新海誠は性癖を抑えたみたいなツイートみるけどあれは完全に嘘ですね。椅子になれば合法的に踏んだり蹴ったりしてもらえる、これが性癖じゃなくてなんだと言うのか。うらやましいわ。
以上です。ごちそうさまでした。
ちょっと映画をすぐに2回目見にいく気力はないので小説版でも読もうかな、、、
まとめ
超ハイカロリーな激重シリアスを、魅力的なキャラクターと圧巻の映像でギリギリエンタメ枠に収めたような作品でした。見ていてめちゃくちゃ疲れる作品ではありますが名作なことは間違いないです。
時代を築いた三部作がかなりしっかり完結を迎えたという認識でみてますが、今後の新海監督はどういう活動をするんでしょうね。楽しみです。
本感想文に共感できた方、2回目が見たくなった方へ。
同じく災害に立ち向かう信仰パワーを描いた過去2作は、ストーリー上のつながりこそないものの土台として密接に関係しているように感じました。
過去作の考察や感想文も見ていってもらえると嬉しいです。
tomatojuicer222.hatenablog.com
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