感想文 JOKER
観ました。
もう予告から期待バッチリ、アカデミー賞も取ったヒースレジャーのジョーカーのあとに、半端なものは出すわけないだろうという確信はありましたが見事に超えてきましたね。
本作、見るべきポイントは音楽と色彩設計です。
社会問題、貧困やデモと絡めて現代の世相を風刺的に描いてるみたいな考察はいろいろ言われてるけど、そこはあんまり深堀りする事でもないというか、見てれば素直にわかるラストシーンに繋がる仕掛けです。シリアスと狂気に塗れた中で数少ないエンタメとしての面白ポイントなので、そこを評価するのはいいんですけど。
しかし僕としてはもっと声を大にして、音楽と色彩。そこを推していきたい。なぜならそこにヒース版ジョーカーの影を見つけることができるからです。
で、音楽ですよ。
ずっとチェロだよね?低音な弦楽器でレ〜〜〜ファ〜〜〜って鳴ってて、BGMのほとんどがその2音だけの繰り返し。これ何かと言うとハイこちらの動画。
伝説になったノーラン版、ダークナイトの予告です。スーパーかっこいいですね。これがつまりジョーカーのロールモデルともいえる映像ですが、この1:55〜の数秒をみてほしい。これですよ。
ファンが聴けば一瞬で11年前のあの日に戻れる、この特徴的すぎるテーマが、しつこいくらいにずっと繰り返し流れるんですね。あのノーラン版に、ひいてはヒースジョーカーに続く話だぜと暗に示し続けるんです。
そして色彩。
このキービジュを見て欲しい。この鮮やかなオレンジを。なんだこれ。ジョーカーっつったら紫だろオラァァァ。
と、ファンならみんなそう思うんですよ。ジョーカー=紫スーツ。もう僕らが生まれる前からの世界の決まりごとです。
そしてラスト15分。あまりにも衝撃でした。いるんですよ。ジョーカーが。衣装はもちろんこのオレンジスーツのまま。それなのにパトカーに乗せられて連行される姿はまさにあの日のジョーカー。
暗がりの後部座席、彩度を失った画面の外で、街はデモ隊の火に燃やし尽くされているんですね。で、オレンジの炎に白塗りの顔が照らされる。その瞬間だけこの衣装がさ、補色って言うんですかね。ほんの一瞬なんですが見事な紫に輝くんですよ。
まじでこのシーンが見事すぎて、ヒースのジョーカーをこの世にもう一度呼び戻そう(そして超えよう)という執念が伝わってきました。この笑みを浮かべた1カットのためだけに、主演はこいつしかいなかったという納得が得られます。無言の演技というかまぁすごい。
思えば「映画を観て感想文を書く」、そんな長く続いている趣味を見つける、そのきっかけになった作品がダークナイトなんですよ。そんな僕の人生を支える名作。まさかまさか11年もたって、あの続きをこんな大満足なクオリティで観られるとは夢にも思いませんでした。ご馳走様でした。