ASCASO社のエスプレッソマシンについてマニュアル和訳を勝手に進めています

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【ネタバレあり】ダークナイト論3

前回書いた通り、どうやらジョーカー先生は気まぐれに混乱や恐怖を楽しむキャラではないらしい。"バットマンと火遊び"という大きな目的を持ち、始めから最後まで全ての行動が隙なくこの目的に沿っている。となるとずっとバットマンと遊んでいたい先生としては、自らの計画の中に"バットマンの引退を阻止すること"を含めているのではないか。

 前記事はこちら

【ネタバレあり】ダークナイト論2 - tomatojuicer222's diary

"バットマンの引退を阻止すること"、その結果がレイチェルとデントを人質にとるという行動なのではないか。これが以前の記事からちょいちょいほのめかしている、ジョーカーがバットマン引退を意図的に阻止したのでは?説である。以下でこの説を検証していく。


0.復習 各キャラの役割を整理しておくとこんな感じ

  • デント :こいつがいれば街は平和になり。平和になればバットマンは引退できる。
  • レイチェル :引退すれば彼女と結婚できる(とブルースは思ってる)。引退すれば街は平和に。

引退が先か平和が先かという問題はあるものの、街の平和な将来を象徴していた二人である。反対にジョーカーは同じ"引退が先か平和が先か"問題を

というジレンマとして突きつける。ジョーカー先生は人質として見事この二人を選出し、結果バットマンは引退できないまま隠れて生きる事になる、というのがメインのストーリー。重用なのは、引退に関わるこの二人は偶然選ばれたのか?それとも引退を阻止するという目的のために意図的に選ばれたのか?である。

1.ジョーカーは始めからバットマン引退を考慮している
物語前半のマスクを脱いで姿を現せ!イベントでは、

  • ジョーカー(演技):バットマンがいる限り街は平和にならない(だから引退しなよーwww)

という主張で世論を操り、この結果ブルースは引退を決意する。この時点ではジョーカーの行動は"正体を暴きバットマン無力化→殺す"という方針に見える。つまり引退を迫っている。

 

これに対して留置場以降のシーンではジョーカー自身の口から、殺す気はないと語られ、また終盤ではバットマンという存在自体がジョーカーのパートナーとして重要という本心もうかがえる。

  • ジョーカー(本心):バットマンがいる限り街は平和にならない(だから引退なんてしちゃいや!)

この主張の変化の理由を前記事では"対マフィア用のパフォーマンス→マフィア乗っ取り後に本心を出した"と考察した。

 

つまり物語前半で引退を迫るのはマフィア向けの演技である。行為自体に大した意味はなく、重要なのはタイミングである。マスクを脱げと言い始めた時には既に"人間離れしたバットマンにも中の人がいて、そいつの現役or引退で街全体の将来が決まる"というゴッサムシティが孕む問題をしっかり見抜いている。

 

中の人を倒せばいいなんて当たり前の様ではあるが、ビギンズの敵やマフィア達は中の人を特定するという発想には至らず(正体を知ってる影の同盟は除いて)、本物の怪物かのようにバットマンを恐れている。

 

自らを怪物と呼び、しかしバットマンがいない世界では自身もただのコソ泥、と自認する先生だからこそ、同様にただの人間である中の人の存在を想定できるのである。

 


※余談
昔映画化されたバットマンでは、敵たちは多少なりとも不思議な能力を持っていて、バットマンも引退などで悩まない。人の手に負えない怪物が出てきてそれを倒す、王道のヒーロー映画。

それに対して今回の三部作では全員ただの人。だからこそ、町の平和は市民に任せて自分は引退すべきではとか悩んだりする。従来の作品で警察はモブだが、このシリーズでは警察内部の腐敗とか市民の行動が大きくストーリーに関わったりする。バットマンの名を借りてはいるが、ヒーロー物というより刑事ドラマ、サスペンスとか戦争映画の方が近いんじゃないかな。

 


2.なぜレイチェルを狙ったのか
レイチェルは他の犠牲者に比べてかなり一般人寄り。ゴードンの前の市警本部長、500人超を裁くマフィア担当判事、500人超を捕まえたデント、と街の大物ばかりが狙われる中、なぜ最後に指名されたのがレイチェルなのか?


これは当然、ウェイン邸でのパーティーの際に窓から落ちるレイチェルを助けたから。この時既に街の大物を次々にターゲットにするのとは別に"中の人にとって大事な人"を使う計画を進めていた事になる。

後で留置場から人質(レイチェルとデント)を助けに行かせるイベントに使うためなのだけど、ではどのタイミングから計画してたのか?その辺を整理するのに以下のひっかかりが重要になってくる。



3.ジョーカーがターゲットのヒントを残した理由
留置場のシーンで、市民を襲ったのはバットマンの反応をみるため、と一言だけ説明されている。

これだけではなんの事か全然わからないが、ひとつ確かなのは"マスクを脱いで名乗り出ろ"という脅しのためだけならば、殺害予告時点でターゲットを指名する必要はないという事。

 

予告をしたせいでジョーカー側は一旦デント殺害に失敗し、予告のつじつまを合わすために全く関係ないハービーさんとデントさんをわざわざ殺すという寒い事をやっている。

 

こんな風に手間をかけて予告しなくたって、街の大物が毎日殺されていけば名乗り出させるための脅しとしては本来十分なはずである。それでもあえてカードにターゲットのDNAを残すなど予告をしなければならなかったのである。それが"反応をみる"の作業なのである。

 

事前に予告した相手がバットマンにとって大事な人なら「守るために動く」はずというわけ。マフィアと手を組んで動き出した直後から、街の大物を次々狙いながらも、いずれは中の人にとって大事な一般人をも狙う計画を立てていたのである。そんな"大事な人探し"の最中に、ジョーカーの目の前でレイチェルが目立っちゃったものだから、レイチェルが人質として使われる事になったってわけ。

 


4.あれ、これだと順番おかしくね?
普通にストーリーを順番に追っていくと、カーチェイスのシーンで

  1. デントがバットマンの囮になってジョーカーをおびき寄せる。
  2. ジョーカー側はスパイ通じてデントは囮であると知り、人質を使って脱走。

という風に見える。(ジョーカーが病院でデントに言うセリフ、デントの計画を数個のドラム缶と爆弾で逆転して見せた、というのをうっかり信じてしまっている。)

 

ところがこの流れは"大事な人を特定しておい使う"計画をマフィアと手を組んだ時点から進めていいた事と矛盾する。

 

実際には囮捜査の情報を得るより前から、ジョーカーはわざと捕まって→脱出する作戦だったのである。デントが考えた予想外の策(ブルースの代わりにバットマンとして囮になる)に土壇場で対応し奇跡の逆転をしたわけではない。はじめっから「逆転風の計画通り」なのである。正しい順番はこう。

  1. 「一旦捕まって、ラウを連れて脱出する」計画を立てる。人質候補の検討などばっちり準備を済ませる。
  2. デントがバットマンの囮になってジョーカーをおびき寄せる。
  3. ジョーカー側は計画どおりに、人質を使って脱走。(2,3しか知らないと奇跡の大逆転に見える)

捕まった後の脱出ルートとして使うために"大事な人探し"までしていたのが何よりの証拠である。


計画通りだったと考える理由は他にもある。

 

例えばブルースが名乗り出る決意をした時、ジョーカーの脅しに屈したのだったか?

 

マローニをバルコニーから突き落とすシーンで"分かっているだろ?名乗り出ればジョーカーが向こうから来てくれる"様な事を言われ、直後にブルースは名乗り出る決意をする。つまり"ブルースが自分をを囮にする"なんて計画はマローニですら理解しており、ブルースも実際そのつもりでいた。レイチェルもその点理解して喋っている。

登場人物たちの中では"名乗りでるのは脅しに屈したのではなく、囮としてジョーカーをおびき寄せるため"というのはもう暗黙の了解みたいなもの。ジョーカーだって当然その前提で計画を練っているのである。

 

整理すると

捕まりたい人と捕まえたい人が不毛な争いをしている感じですねわかります。

 

ただしデント側は捕まえるための切り札として"バットマンジョーカーを捕まえるための囮である"というカードを持っていて、それは登場人物全員(もちろんジョーカーにも)ばればれ。それに対してジョーカーは"わざとつかまりに行く人"であり、捕まったあとの脱出カードとして"レイチェルと携帯爆弾男"を持っている状態。そりゃジョーカーが勝つにきまってるでしょ。



ちなみにデントが脱出用の人質に加わったも前述の"大事な人探し"の成果。大事な人探し中に狙われて生きているのはデント、レイチェル、市長の三人。

という流れ。デントが本当にバットマンだった場合は、レイチェルだけ人質にされたのでは??これでも十分脱出の目的は果たせそう。



まとめ
ここまでの考察から言えるのは、レイチェルとデントを狙ったのは"バットマン引退を阻止する目的ではない"という事。

捕まった後で留置場を手薄にするために"バットマンが確実に助けに向かう程度に大事な人"なら人質になれたわけで、この二人が"引退に関わる超大事な人"であったのはたまたまだと言える。

 

引退というテーマでここまで引っ張っておきながらあら残念!

 

 

ただしここで終わらないのが先生のすごいところ。その後ラストシーン、闇堕ちしたデントを切り札として使う流れは、しっかりと引退を阻止するためのものである。以下の疑問を解決していくとその辺がわかる。

・デントとレイチェルの居場所を逆に教えた理由は?
デントがバットマンではないと確定した時点で、市民にとっての本当の希望はバットマンではなくデントである。バットマン以外にそんな存在がいると街が平和になってしまう。バットマンが不要な世の中になってしまう。これはジョーカーとしてはなんとしても避けたい。

 

そして詳しくは後述するが、デントが「正義の人」のまま死ぬのはデントが「生きて活躍するのと同じくらい」良くない。そこでデントを殺すのではなく悪に染める方針を決め、レイチェルとデントの居場所を逆に教える(デントを生かす)という流れ。

 

先生にとって、デントがバットマンでないと確定するのはカーチェイス中なので、このルートで計画を練る時間はカーチェイス中と留置場しかない。既に計画通り人質のスタンバイが完了した状況で確実にデントを残す方法として(警察よりバットマンが先に人質を助けることを想定し)とっさに嘘の居場所を教えたと考えられる。



・"俺を殺せ"とか"ルールを破れ"の真意は?
ヒーローが実は殺人者だったとしたら、街の人たちは正義を見失う。これまでの正義の働きも全て無駄になる。これは三部作全編を通じて何度も登場するロジックであり、バットマンが敵を殺さないのもこのロジックに従うからである。ビギンズで影の同盟と対立したのがそもそも、ブルースの理想がそこにあるからである。

 

ヒーローはあくまでも市民の自発的な正義を促す存在、ロールモデルであり、自発的な正義でこそ町は平和になるのである。

 

反対にジョーカーは"ヒーローに人殺しさせる事で街の平和を壊す"を視野に入れてると思われ、それがこれらのセリフの真意である。最終的にデントを"ヒーローで人殺し"の役に使ったが、当初はバットマンにその役をやらせる予定だったのでは。

 

デントが正義のまま死ぬのはデントが生きて活躍するのと同じくらい良くない、と書いたのもこれ。市民のモデルになるはずのヒーローが実は殺人者、という論理は、ゴッサムを混乱させ続けるために絶対に必要なのである。

 


そう考えると、ラストシーンでゴードン達が嘘をついた事も、案外ジョーカーの当初の思惑通り(バットマンを悪として君臨させる)に戻った程度の意味しかないのでは。結局最後は"デントが英雄として死ぬこと"の効果が"バットマンが人殺しとして居続けること"の効果を上回った形で、一見平和っぽい世の中になる。

 

しかしライジングにつながるこの街の問題、嘘に支えられた平和とバットマンは引退できないという点は、こうしてジョーカー先生によって作られたものなのである。先生さすが!



次につながるおまけ
・マフィアのお金に火をつけた意味は?
報酬を燃やす時の"こいつは俺からのメッセージだ"はボスは俺だというメッセージの他に、バットマンに向けた"ルールを破れ"の意味がある。

 

バットマン警察検察がめちゃくちゃやりたかった"マフィアの資金を断つ"について、ルールを破っちゃえば簡単だったのにね〜というアピールである。他にはマフィアを壊滅をはっきり示す事で、邪魔者は片づけといたから二人で遊ぼうぜ!とか、それでも街は平和にならない→治安悪化はマフィアじゃなく市民やバットマンのせい、などなどいろいろな解釈ができる。確かなのは、どれであろうとも(警察や検察あてではなく)バットマン向けのメッセージだということ。

 

いずれにせよ、バットマンがいる限り街は平和にならない(だから引退なんかとんでもない!)。それでも戦い続けないと街が壊滅しちゃうよーHAHAHA、である。で、この皮肉なことにジョーカーがバットマンより先にマフィアの資金を支配してしまった!みたいな演出は、実はライジングでもよりスケールアップして使われていて、三部作通じての結構重要なポイントになっている。

 

また、一見矛盾に見える様な引っかかりポイントをわざと残しておく、というノーランお得意の手法も、ライジングでは初見でバシバシ気付けるくらい多用されている。この辺を意識してみるとライジングは10倍楽しめる。てことでつづくよ!