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マン・オブ・スティール感想文

監督はザックスナイダーなんだけど、やっぱりこれはノーラン作品だと思うんだよね。

 

 

この記事のテーマは
 
なぜノーランが自分で撮らなかったのか
 
これを解明することです。
 
もちろんインターステラ―を撮りたかったがためのスケジュールとかあるんだろうけど。ちゃんと名前を冠して売りだすくらい、そこに何かしらの意図があるはずなんですよね。
 
 
んで、見たらもう一発ですよ。超わかりやすくノーラン映画でした。
 
 

前提条件としてクリストファーノーランという人は、CGを極力使わない事で有名な監督です。エンタメ目的でCG頼みの派手な描写をするのがもうめっちゃくちゃ嫌いで、人間の生み出すストーリーで魅せたい、という人。
 

反対にザックスナイダーはCGの名手です。特に速さを表現させたらそりゃもう世界一という感じ。(うぃきぺであ調べ)
 

ノーランは、自分には撮れない映像をスナイダーさんにお願いしてまで、速さを追及したかったんだと思うんですよね。そしてそれは速さが派手な映像表現としてではなく、ストーリー上不可欠な要素だって事なんです。
 
 
 
速い描写はどこで出てくる?
一番初めに速い描写が使われるのは、出生の秘密を知ってスーツに着替え飛び回るシーン。クラークはここで初めて地球人ではなく、クリプトン人として飛ぶんですね。

ちなみにここまでの飛ぶシーンは全てカットされ、飛んでると思われる箇所では瞬間移動のようにフラッといなくなる感じに描かれます。
能力を発揮するのはやたら目がいいとか、怪力とか、そーゆー部分では描かれるんですが、とにかく徹底して飛ばない。
 
 
 
で、敵が出てくる。
速いです。
明らかに「地球の慣性の法則を無視した感じの」速さです。
 
なんというか助走がないんですね。動き出しの瞬間から最高速度で動きまくる。敵もクラークも両方そんな感じです。
 
 

で、壊しまくる。
建物内に人がいようとお構いなしです。両者ともに、基本的に攻撃方法はふっ飛ばしてビルにぶつける。
 
これがまたいろんなブログで酷評されてるんですよ。スーパーマンは地球を守る存在じゃないのかよって。
 
しかし当然です。彼は地球を救うためのヒーローでもなんでもなく、超強いだけの一般人なんです。SUPERな目線で地球を守るのではなく、彼の戦いは、襲われたから追い返すだけなのです。
 
 
 

あぁこれがやりたかったんだろうなと。
 

クラークは最後のクリプトン人です。彼の中にはコデックスという形で全クリプトン人の遺伝子が保存されているものの、基本的には最後の一人です。
 
そして自認は地球人なのですが、地球人とはどうしようもなく違います。
 
 
このクリプトン人としての彼と、地球人の違いを表すのが、結局は速い映像なんですね。ストーリーを追ってればもちろん違いを理解することはできるんですけど、そこを観客に圧倒的な映像体験として「体感」させる。

彼が抱える葛藤を観客が共有するのに、これ以上にない表現だと思います。このためにストーリーを追うだけでなく、速い映像が必須だった。だからノーランは自分で撮ることを諦めたんじゃないですかね。お見事です。
 
 
 
そんなわけで唯一のお仲間であるゾッド将軍にトドメを刺すとき、彼はそれはもう悲痛な叫びを上げるんですよね。本当に本当の最後の一人になってしまった。
 
 
彼の葛藤は、最後の一人となったことで決まります。
 
地球人はあくまでも仮の姿で、最後のクリプトン人として生き、血統を守るのです。
 
地球人に対して上から目線、SUPERで、神にも等しい存在として、クリプトン人として生きることを選んだのです。
 
 
だからこそラストシーンです。
 
 
戦うわけでもないのにわざわざスーツを着て、ちょっと浮かびながら、後光を浴びながら、めっちゃ偉そうに話すんですね。ここでやっとクラークケントから文字通りのスーパーマンになったわけですね。
 
 
こう考えると、マンオブスティールというタイトルも秀逸ですよね。最後の瞬間に地球人から見てスーパーな存在だと自認するまで、ずっと「超強い/でも人間」なクラークケントを描いているわけですから。
 
 
 
というわけで監督は違えどこれはノーラン映画だと思うわけですよ。
ノーラン映画の感想文だけを集めた記事目次はこちら。
 
 
 
ちなみにこの続きにあたるスーパーマンVSバットマンでは、ダークナイトやマンオブスティールで積み上げてきた人間ドラマとしての良い部分がすべてぶち壊しです。ゾッドくんの首を捻るとき、何のために泣いたのかわかってんの?!ホントもうブチ切れですよ。あぁヤダヤダ。