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05. 超わかりやすいPID制御〜調理家電の仕組み解説〜

エスプレッソコーヒーメーカーascaso steel pid のマニュアルを和訳する1人プロジェクトの第5章。

PID制御とは、アスカソ製品に限らず調理家電などに使われているヒーターの温度調節機構です。その原理を、アスカソのパラメーター設定をいじるのに最低限必要と思われる程度に解説します。

 

 

PID制御をどこよりもわかりやすく

PIDとは、数年前から大流行中の低温調理など、正確な温度をキープするために使われる技術です。保温できるポットとかでも高い機種には使われてると思います。

P、I、DはそれぞれProportional-Integral-Differential (比例-積分-微分) の略で、温度計の実測値にそれぞれの計算を行います。素人でも思いつく「測定値より高いか低いか」みたいな単調な制御よりも、複雑な計算、高い精度で狙った温度をキープできるわけです。0.5℃~1℃刻みとかで温度設定できる、比較的高額な機種に採用されがちです。
 

こんな読者を想定しています。

  • 調理家電の保温原理を知りたい(興味本位、雑学レベル)
  • 調理家電に使われる技術の高さを知り、値段に納得したい
  • PIDを直感的、感覚的に理解したい(工学初心者向け)
  • グラフや数式が並んでもよくわからん、なんとなくイメージだけ知りたい

そんなわけであえてグラフを使わず、鍋料理などのシーンを例に説明していきます。反対にこんな読者には向きません。

  • PIDの正確な算出をしたい、大学のテストやレポート対策(工学中級者以上)
  • グラフや数式をしっかり説明したいされたい

私自身、コーヒーメーカーの温度設定をいじりたいだけの素人ですので、このレベルには到達できておりません。素人の雑学レベルとご理解ください。

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ascaso steel pid マニュアル和訳プロジェクト - tomatojuicer222's diary

 

ざっくり説明

  • P=計測値(センサーが測る現在温度)と目標値(設定温度)の差
    • 差が大きいほどヒーターを強く稼働する
  • I=上記温度差の時間積分
    • Pだけでは一生消えないずれを「長時間の測定で検出」
  • D=計測値の微分
    • 突発的なブレを「短時間の測定で検出」

何言ってるかわかりませんね。この記事を半分くらいまで読むとこれがなんとなくイメージできるようになります。最後まで読むとこれらを採用した調理家電のすごさがわかるようになります。

Pが大きくなると

しゃぶしゃぶ屋さんをイメージする。卓について目標温度までまだまだ差が大きい場合、ヒーターはフル出力で温めればよい。しかしあとほんのちょっとで目標温度って時までフル出力だと、目標温度に達してからも余熱で温度は上がってしまう。出汁はグラグラ沸いて、アクが泡泡してくる。店員が火力を下げに近づいてくる。

今度はヒーターをOFFにして温度が下がるまで待つわけだが、ここでも目標温度以下まで冷めてから再度ONにしたって、温まるまでのタイムラグで温度は下がりすぎてしまう。
そこで目標値にある程度近づいたら、温度上昇にあわせて少しずつヒーターの出力を下げていく。ちょうど目標温度付近でヒーター出力と自然に冷める熱がつりあえば、理論上目標温度をキープできる。目標温度を超えた場合も完全にOFFにするのではなく、やはり少しずつ出力を下げていく。

このように目標温度との差に応じてパワーを変化させる。これが「P制御」。

Pを大きく設定すると、フルパワーで働く機会は少なくなる。つまり目標温度に到達するまで時間はかかる。その代わり行き過ぎがなくなるので、一旦目標温度に到達すればあとは安定して温度をキープできる。

I が大きくなると

ここまで聞くとP制御だけでいい感じの温度管理ができそうである。しかしP制御だけでは不都合がある。

例えばPの値を調整した日よりすごく寒い日。P制御で弱まったヒーター出力よりも自然に放熱する熱が大きすぎて、いつまでたっても目標温度に到達しない。

そこで「1分たっても目標温度に達しない場合、出力をちょっと強くしよう」みたいな判断する。これが「I制御」。

P制御は「今この瞬間の目標温度との差」を使う。

I制御は「目標温度との長期的な差」使う。

Iの値は時間で設定する。

1分たっても目標温度に達しない場合

の1分のとこ。Iが大きいとより長時間の測定データをもとにパワーを決める。精度は高くなるが、安定するまでに時間がかかるという事になる。

Dが大きくなると

さて、P制御で温度を安定させ、I制御も取りいれたので外部環境の変化にも対応してくれる。ところがこれでもまだ弱点がある。

P制御やI制御では目標温度からずれるほど強く、近づくと弱く出力する。そもそもの思想が「時間はかかってもいいから行きすぎないように温度を安定させよう」なのである。

温度が安定してる鍋に食材を放り込むシーンを想像してみる。鍋の温度は一気に下がる。急にガッと冷やされた場合、急にガッと出力をあげた方がよいのは明らか。同じく急に温度が上がりすぎた場合、いきなり出力OFFにしてよいはず。

急な変化を受けて「1秒で10度も下がった!あと5秒くらいは同じペースで下がるはずだ!」みたいな数秒先の未来予測から出力を判断する。これが「D制御」。

Dの値は時間で設定する。

1秒で10度も下がった!あと5秒くらいは同じペースで下がるはずだ!

のあと5秒のとこ。Dが大きいとより長時間のブレを想定してパワーを決める。精度は下がるが、予測通りにブレた場合は一気にカバーできる。

 


一般的なPID各パラメーターの設定方法

ここからは読み飛ばしても構いません。ほとんどの調理家電はPIDの値をユーザーがいじる作りになってないからです。我が家のコーヒーメーカーはものすごい特殊なので調整が必要というだけです。

(あくまで一般的なPID制御でのパラメータ設定であり、アスカソ機に搭載されているPIDはちょっと別物かもしれない)

(そしてネットで集めた専門的な説明を噛み砕いた例なので、ところどころ正確じゃなさそう。家庭用マシンの設定程度ならいいかもしれないけど、工学系の学生がテストで書いたら0点、程度の雑な解釈なので注意。)


P値(%)

P値はヒーターのMAX性能に対して、何パーセントの範囲でP制御を行うか設定する。
出力範囲が0-400℃のヒーターの場合、P値に5%を設定すると、設定温度の周辺20℃(400×0.05)の範囲がP制御によるゆるやかコントロールになる。設定温度が100℃なら90℃-110℃の範囲。90℃以下ならフルパワーで温めるし、110℃を超えると完全OFFになる。
P値を大きくすると、PID制御範囲が広くなる。反対にフルパワーで働く区間は狭くなるため、目標温度への到達時間はかかるが、一旦決まったら温度は安定する。
P値を小さくすると、PID制御範囲は狭くなる。つまりフルパワーで働く区間が長くなるため、目標温度への到達時間は短くなるかわりに。数度単位のブレがなかなか消えない。ブレをどこまで減らしたいか?という点をよく考慮してP値を決める必要がある。

I値(秒)

I動作は、補正に何秒かけるかを設定する。
目標温度100℃に対して、P動作のみで温度99℃で安定している場合、目標温度との差(1℃)もずっと変わらない。
この差を10秒で埋めるのか、20秒かけて埋めるのか、という設定方法。
I値を大きくすると緩やかな補正がかかるため温度は安定するが、補正に時間がかかる。
I値を小さくすると急な補正がかかるため温度は安定しにくいが、短時間で補正できる。
ブレをどこまで減らしたいか?という点をよく考慮してI値を決める必要がある。

D値(秒)

D動作は、何秒先まで予測して補正するかを設定する。
この変化が10秒続くと予測するのか、20秒続くと予測するのか。
D値を大きいと予測されるブレも大きくなる。それだけ急激に働くため、小さな変化にも過敏に反応でき、設定温度付近をキープしやすいものの、付近でのブレは大きくなる。
D値を小さくするとP動作に戻りやすい。つまりD動作による補正量も少ないため、小さな変化に反応しにくく温度変化に弱いが、設定温度付近での安定性は高くなる。

 

まとめに変えて調理家電愛を語る

序盤に書いたざっくり説明を再掲しておきます。

  • P=計測値(センサーが測る現在温度)と目標値(設定温度)の差
    • 差が大きいほどヒーターを強く稼働する
  • I=上記温度差の時間積分
    • Pだけでは一生消えないずれを「長時間の測定で検出」
  • D=計測値の微分
    • 突発的なブレを「短時間の測定で検出」

初めはちんぷんかんぷんだった説明が少しイメージできましたか。

また、低温調理器やホットクック、保温精度の高い電気ポットがなんであんなに高額なのか、これだけ複雑な計算とチューニングを理解すれば、納得できるんじゃないでしょうか。

実は一般家庭向けの調理家電で±0.5℃とかの精度が出せようになったのってここ5年程度の話で、それ以前の保温システムって10℃刻みとかでしたよね。生焼けでは食中毒が怖い。火入れしすぎは硬くなる。そんな肉や魚に対する繊細な火入れは、こんな技術の積み重ねなんですね。技術を学ぶとこれらの調理器具を見る目も変わるんじゃないでしょうか。お値段とすごい技術に納得したら、さぁポチる時間だ。

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