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tomatojuicer222's diary

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【映画感想文】ジュラシックワールド感想文3

前回の記事では、恐竜のインフレとは違う、新しい方向の面白さを匂わせたところで終わりました。今作一番の見どころは、すばり「恐竜の表情」だと思います。またまたネタバレ多めでいきます。

この記事からの続きです。

 

tomatojuicer222.hatenablog.com

 

 ジュラシックパークの製作陣がラプトルだいすきなのは過去作を見てれば分かるでしょう。というか一作目以前の世代の少年たちにとって、肉食恐竜といえばティラノサウルス!一番つよいし!がおー!みたいな価値観だったわけですよ。そこに一作目主人公のラプトル大好きおじさんが何度も語って聞かせるのです。狡猾で、群れで、すばしっこくて、鉤づめで、怖くて、最高。何を隠そうラプトルという恐竜をを世に広めたのが一作目のジュラシックパークなわけです。(話を盛ってるわけじゃなく、ウイキペディアにも書いてあるレベルで、ラプトルを世界に広めたのは初代JPです。)

 

 二作目三作目ではその流れで、恐竜チームの主人公的な役割を見事に果たす皆勤賞です。そして三作目で人間チームはラプトルの化石から声を再現し、ほんの一瞬ですがラプトルをコントロールすることに成功します。これ、映画の中だとしても歴史的瞬間じゃないですかね!

 

 ストーリー上これら前作とのつながりはそんなにありませんが、映画史的にはこの流れを汲んで今回があるわけですが、すごいんです。主人公はラプトルの飼育員で、名前をつけてかわいがっています。パーク開園後の本作ならではですよね。今までの三作では想像すらしなかった事なのですが、危険な生き物としての恐怖や畏怖だけではなく、日常の風景としてのラプトルへの愛情が描かれ、そしてそこがストーリーの要になっていきます。

 

 宣伝ポスターや事前のリーク画像を見て、意思疎通できるラプトルなんてラプトルじゃない!と今作を馬鹿にした方もいるかもしれません。しかし商業主義に走った脚本家が子供に受けそうなトンデモ設定をぶち込んだって感じでは全然ないのです。この程度ならギリギリありえそうだな、って納得できるくらいの、ごく限られたコミュニケーションが描かれています。それこそ餌をあげる/もらう程度のゆるい繋がりです。完全に言うことを聞くわけではなく、いつ襲ってくるか計り知れないところは以前からのラプトルそのものです。しかしたまーに”分かってそう”な顔をする。ほんの表情一つです。現実に見たこともない、しかも恐竜って基本何考えてるかわからない系の顔なのに。筋肉のちょっとした動きだけで、そのあたりの絶妙な信頼関係を見事に描き切っています。こんなことができるのはきっと、20年間も恐竜映画を作り続けてきたジュラシックパークの、映像技術という財産です。

 

 人間同士の物語と対比させて考えるとより面白いです。信頼関係とはなんなのか。遺伝子上の、生物学上のヒトとしての繋がりと、一緒に過ごして得た繋がりはどっちが強いのか、みたいな話です。メインキャストの兄弟、両親が離婚間近だったり、そのそもその話し合いのために子供がパークに送り出されてたり、弟くんは離婚の気配に気づいてるのに兄貴は全く気付いてなかったりします。とにかく人間たちはすれ違ってばっかり。言葉のあやから譲れない信念系の話まで、原因は様々ですがとにかくこいつら話が噛み合いません。それに引き替えラプトルはどうよ。「YES、マスター!」から「お前を食ってやる」まで目線ひとつでなんでも語ります。主人公とラプトルのやりとりは本当にすばらしい。私は何度見返してもきっと号泣するんだろうなと思います。ラプトルとお話しできるおっさんは主人公以外にもう一人いて、コイツもまたいいんですよ。あの暗闇であの状況で個体の識別できるんだから相当なもんです。愛ですね。(遠い目)

 

 さて、ここまでずっとべた褒めしてきましたわけですが、一つだけ残念ポイントがあるとはじめに書きました。今作特に気に入ったのが、このラプトルと人間の関係性でした。だからこそほんの些細な事であっても、この見事な関係性を濁す様な設定ミスはどーしても指摘しておきたいのです。普通になんとなく観るだけならスルーできるような、ほんとちょっとしたおまけみたいな設定なのですが。

今作のラスボスである、いろんな遺伝子ハイブリッドちゃん。彼女は群れを作らず兄弟を食い殺し、脱走します。周りに自分と同じ種がいないため、アイデンティティが曖昧で攻撃することしか知らないという設定の個体です。

そんな設定にもかかわらず、ラプトルの遺伝子を持っているという理由で、愛しのラプトルちゃんたちを仲間に引き入れ人間を襲わせようとします。ここ、納得いかないんですよね。子供のころにラプトル舎でブルーたちと一緒に育っていたみたいな設定が一つあれば満足なんですけど。