ASCASO社のエスプレッソマシンのマニュアル和訳したり、映画の感想文、たまに恋愛相談。

tomatojuicer222's diary

ASCASO社エスプレッソマシンのマニュアル和訳を進めたり、映画の感想文、たまに恋愛相談

感想文 アナと雪の女王2が超マジカルで超レリゴー

僕前作がめっちゃ好きだったんですよ。21世紀の新しいプリンセス像に踏み込んだ良作だった。今回も相応に期待つつ、ハードル上げすぎかな?という気持ちもあり。しかし蓋を開けてみれば期待を大幅に超える大傑作ですよ。最高。

 

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感想文 からふる!エニグマフラワーズがエニグマたのしいでもっす(ちょっと考察)

スマホゲームの未来を見た。ような気がする。

 

スマホアプリ「魔法使いと黒猫のウィズ」、そのゲーム内で開催さた新イベント、からふる!エニグマフラワーズ。

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感想文 ムーンライト

ラ・ラ・ランドが大好きなんですよ。

で、オスカー間違いなしと言われていたラ・ラ・ランドを退けて作品賞をかっさらって行ったのがこのムーンライト。

あの大好きなラ・ラ・ランドが一体何に負けたのか、見たい見たいと思っていたらいつの間にかAmazonプライムに追加され、そしていつの間にか終了目前になっていたので慌てて観た。(現在は配信終了)

 

あらすじですが麻薬に汚染された貧困街。一言目からいきなりハードすぎるでしょ。普通のエンタメ映画ならここから対立組織との抗争があってバッタバッタと人が死ぬやつーーー。

しかしそうではなくて、街を仕切る売人のボスが、ある日虐待されている子供と知り合い、父親替わりのように世話を焼くようになる。その子供の方が主役の物語。

 

 

内容というかとにかくラ・ラ・ランドと対になる双子みたいな作品という印象。アカデミー賞授賞式のあのアクシデントがなくとも、やっぱりきっとそう見えただろう。

 

なんというか写真には全然詳しくないんだが、Instagramに付属の写真加工アプリで寒色系のフィルターをかけたような、空の青と草木の緑と、そして主人公ら黒人の肌がとても美しく映える。素人目にもばっと目を引く色へのこだわりがとても印象的だった。

太陽の眩しい青空というよりは、雨上がりの晴れ間のような湿度の匂いを感じる青。ずっとそんな調子で、爽やかさと陰鬱さが同居するような世界から目を離せなくなった。

 

なんとかトリエンナーレみたいな企画展で、美術館の小部屋に流れる映像作品のように。エンタメとは別軸に描きたいテーマがあって、それをいかに映像に落とし込むかみたいなところが追求されている。

 

ラ・ラ・ランドが赤や黄色、暖色系のフィルターを通して華やかな業界の下積みを描いているのに対して、こちらは寒色系のフィルターを通した美しい映像を通して、薬物と貧困と差別に塗れた世界をリアルに描く。

 

名作と言われるような良い映画って、たった2時間の中に誰かの人生を追体験できるんですよね。ちょっと上手いエンタメ映画と歴史に残る名作の違いはそこだよなと思っていて。

 

僕らの普段の生活とは絶対に欠片も交わらない、1ミリも共感なんかできなかったはずのダーティーすぎる世界の裏側。

けれども最後には、彼が普通のほんの小さな幸せを手にできますよう、そう願わずには居られなくなってしまう。これが共感で、これが人生を描くって事ですよね。

 

特に何も事件なんて起こらなくて(起こるけど、きっと彼にとっては小さな事件だと思う)、彼らにとっての日常を、盛らずにきちんと描く。それができたからこの賞なんだよなと、納得の受賞でした。

感想文 グランメゾン東京が面白すぎる

日曜夜の楽しみが止まらない。

 

グランメゾン東京、料理ドラマ好きだしまぁ見ておくか程度で見始めたんだけど、蓋を開けてみればこれきっかけで人生が変わるんじゃないかってくらい面白い。大袈裟でもなんでもなく、僕の考える理想のエンタメフルコースみたいなものがあったとして、そのメインディッシュに近い一端を言語化するきっかけになったように思う。

 

この面白さがどこから来るのかと考えたとき、それは徹底した演出の力だと思う。 テレビ業界でいう演出というセクションの仕事はよく分からないながら、ストーリーや演技、音楽みたいな各々の素材を組み合わせて生かす「その他の全て」位の認識で書いている。

 

例えば3話。

キスマイ玉森演じる元弟子が、主人公の作った料理を味見するシーンがある。

主人公に認められたくて、認めてもらえない悔しさから反発して、けれどもどんなに反発しても主人公の腕前には感服ぜざるを得ない、、、。

そういう内面的な情報量の多い超重要シーンなんだけど、セリフなしの表情の演技だけで作ってしまう。これが本当にすごかった。

 

僕はゲーム業界にいるのだけれど、エンタメを作る側の視点において「せっかく作った面白さが伝わらない」というのは怖いことだ。怖いから普通はどうしてもセリフやナレーション、要は言葉で説明を入れてしまう。

玉森という俳優の演技力をよく分かっていて、目線だけの演技に全てを賭けて、セリフのない数秒間を世に出す決断ってとんでもない事なのだ。

「セリフはないけど重要シーンだよ」をカメラワークだけで伝えるアナウンスと「肝心のシーンの意味は自分で考えてね」というある種の突き放し方がめちゃくちゃうまい。

説明がないからこそ映像の意図を視聴者は自分で考え、そして複雑な心の中まで想像してしまうんですね。自分で一旦咀嚼して、考えて出した自分の思考なので共感出来ないわけがないというか。無理やり押し付ける感じのイイハナシダナーという感動じゃなくて、共感ってこうだよなというお手本のような共感。

 

調べてみると演出をやっている塚原あゆ子という人、数年前にやったドラマ「リバース」で玉森くんと仕事してるんですよね。主要キャストが割とパワー系の演技をする中、玉森の悩める教師役は抑え目ながら輝いていた記憶がある。他にも夜行観覧車、Nのために、アンナチュラルとか好きだった作品ばかり。ちょっとサスペンス寄りの作品で売れた方ならではというか、ジャンルは変わっても道標のように緻密にヒントを散りばめる能力が凄まじいんですよね。

 

そしてこの記事を書いている時点での最新4話。(毎週言ってるけど)今回はまたどえらい神回だった。

 

何がってウニですよ。

調理場のアクシデントでウニの仕込みを急遽手伝う玉森。昔は主人公に認められるために必至でウニの下拵えをしていた、というエピソードが語られる。その設定に恥じない活躍で、ストーリー的には大成功で終わり、という週なんですが。

 

視聴者的にはどこかほんとちょっとの引っかかりが残るんですよ。最近どっかでこんな感じの「ウニの殻を器にした料理」みたな。どこだっけな、と。

思い出して1度目の衝撃。

 

ウニ、同じくこの作品の第一話じゃん。

数年前、玉森が主人公の店で弟子をしていた時のエピソード。そこでの前菜にバッチリウニ使ってるんですよね。お前かーーーお前だったんかーーー玉森ーーー!!

だから「そんなん言われなくても分かってますよ」と阿吽の呼吸で仕込みに入れたんですよね。

 

こんなエモいとこなのに、ちょっとくらい回想シーン映したりしないの!?昔仕込みやっててさ、なんてセリフだけで済ませたよねあれ。3年前の事件の日を匂わせるような描写は一瞬たりともなかったはず。

 

前述の通り、3話でセリフなしの映像だけで見せるというのをやったあとで、今回は映像すらない完全ノーヒント。それで1話から仕込んだ渾身の伏線を披露する(いや披露してない、でも気づかせる)とか凝りすぎていて意味がわからない。

 

そして公式サイトでもうひとつのサプライズ。

https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/cuisine/

 

この1話と4話でウニを揃えるくだりについて、監修をしたシェフが語ってるんですよ。

料理ドラマだから料理のクオリティにこだわる、ちゃんとプロの監修がつく。それは分かる。

そうじゃなくて、プロに料理を依頼するその前の時点で、この感動が既にデザインされている。そこが激ヤバポイントすぎるんですよ。

 

見るからに金のかかっている料理の監修。毎週華やかで素晴らしいです。と思いきや。それが単なる見栄えや美味しさを担保する、という形式のこだわりを超えて、ちゃんとストーリー上の仕掛けになっている。

先の表情での演技もそうですよね。上手い俳優がいれば上手いドラマにはなるんだろうけど、それを活かして具体的なストーリーの面白さに結びつけている。

 

演出のおかげでストーリーが3倍面白い、盛ってるわけじゃなく本当に3倍くらいの爆発力に繋がっていると思う。

 

 

思い返せば僕の好きな映画マン・オブ・スティールもそうだった。

速さを映像化する、という演出に超絶キモチワルイほどにこだわりまくった結果、速いスーパーマンと力を隠して生きるクラーク・ケント、という生き様の葛藤までもを映像に落とし込んでしまった神映画なんですけど。

その「速い映像」を撮れる監督、としてザック・スナイダーを選んだ製作は、これまた好きな監督クリストファーノーラン。繋がってきましたねーーー素晴らしい。

 

超余談ですがノーランといえば盟友トム・ハーディです。ダークナイトライジングとかダンケルクで見せる、マスクに顔を覆われた状態での目線だけの演技。あれは本当に素晴らしい。そういう「目で語らせるならコイツしかいない」というお抱えの俳優を持っている監督はマジで強い。そんな贔屓の監督を見つけ作品を選ぶところから、このブログの感想文は書かれていってます。最高の材料をよく知っていて、最高の料理に昇華できる演出。今度からは塚原あゆ子もチェックしていこう。

 

で、つまり僕が考える王道のエンタメってそうなはずなんですよ。ストーリーが良いのはもちろんだし、クリエイティブにこだわるのも当然。そこまではうちの会社のゲームでもまぁ高いレベルでできていると思う。

クオリティがこだわりを超えてストーリーにまで影響し、ちゃんと面白さとしてユーザーに伝わる。そこまでやるのが王道を行く強者の歩みだよなと思った。

 

最近大ヒットしたソーシャルゲームのタイトルを見てもなるほどそういうところがよくできているなと改めて思う。

開発陣がもともとみんなタイトルのファンで、思い入れがあるから頑張りました、みたいなことをそこの社長は語ってるんだけど、きっとモチベーションだけの話ではないですよね。そのタイトルを極めまくった結果、面白さを担保する仕様とか技術にまで昇華できている。だから当然のように売れたんだなと思う。

 

アイディア1発で運良くバズったものが売れる現代だけど、奇を衒うではない王道な面白さはやっぱり最高に面白い。そんなことを毎週思い出させてくれる作品です。

 

グランメゾン東京、本当にオススメ。