感想文 からふる!エニグマフラワーズがエニグマたのしいでもっす(ちょっと考察)
スマホゲームの未来を見た。ような気がする。
スマホアプリ「魔法使いと黒猫のウィズ」、そのゲーム内で開催さた新イベント、からふる!エニグマフラワーズ。
今期テレビドラマのグランメゾン東京が最高すぎて、面白さとは何か?みたいな事をずっと考えている。
その中で少しだけ見えてきた理想のエンタメ像に近いことを黒ウィズがやっていて素晴らしかった、という話。
リリース前
本編リリース前、告知の段階からワクワクが段違いだった。
日曜朝の通知から始まり、ゲーム内のショートストーリーにはプリキュア風のOP主題歌がつく。ご丁寧に「8:29」表示ととも遊戯王的なアニメの次回予告から始まり、「8:30」でたぴたぴ〜と始まるニチアサ感の再現ぶり。
この時ゲーム外、公式TwitterやWebサイトもエニグマジャックされており、ぬりえや映画版ポスターなどパロディ元がやりそうな事をしっかりパロってある。
公式エニグマTOP
プリキュアっぽいギャグイベントという、やって許される下敷きは前からあったものの、まさかここまでやりきるとは。
本編
そんで本編。
ストーリーは普通にかわい面白ギャグ。期待を裏切らない圧倒的ほのぼの。それはいい。
そんなことより問題は並行して開催されるイベント内イベント?
「マジスクファイタートライ」
意味がわからない。
これは先に書いたOP動画の細部も細部、ニチアサの8:29感を演出するための、前枠カードゲームアニメの予告編だったはずだ。
それを何故かゲーム内でプレイできるのだ。
なんだこれは。
内容も謎に凝りまくっていて、こちらの行動に応じて相手プレイヤーが慌てたり、プレミすると教えてくれたり、調子に乗ったり。対面でやるカードゲームっぽさを黒ウィズというゲームのフォーマットに乗せて見事に再現している。
(バトル中に行動を指南してくれるチュートリアル機能の流用っぽい。すごい。ちゃんと攻略のヒントにもなっている。楽しい。)
マジスクがエニグマ世界に手触りをもたらす
確かにエニグマがニチアサアニメなら、その前後の放送も、誰もが知ってる大手コンテンツなのだろう。こっちの世界で言う仮面ライダーなり、ウルトラマンなり。アニメを見てない大人でもなんとなくわかるし、街の子供たちにとってはメインカルチャーなはずだ。それはそう。
イベントの舞台として街っぽい背景を作るのはよくあるけれど、そこに文化まで再現する。ストーリーでチョロっと言及されるのではなく、ちゃんとその世界で遊べる。
そこまで作り込む意義は考察厨にとってあまりにも大きい。
これはエニグマという「フィクションアニメ」の話ではなく、あの世界でのリアルなのだ。
あのふざけきった世界観、一見すると、ギャグアニメだし何でもアリで良いんじゃない?と流してしまうようなおかしなポイントも、真面目に世界を考える材料に使えるという事だ。
その前提に立つと、例えばこういう推測が成り立つ。
モティラースカンパニーという悪の組織、名前の通り会社組織としてやっている。そして対するエニグマ戦士も、いもぴー社長の元に集う会社員だ。これまで数年間、エニグマ異界のこの組織体制は単に日本企業を風刺したギャグに見えていた。
しかしモティラースがちゃんと存在し、ネタで企業っぽく描写された訳ではなく、流行りのカードゲームを仕掛けるちゃんとした企業であるという事実。
つまりこっちの世界で言うコナミ、ブシロード、バンダイなのだ。アニメとのメディアミックスでエンタメの総合プロデュースを行う企業、それがモティラース。
悪役側の立場からエニグマ戦士という勧善懲悪ものをプロデュースし、正義のヒーロー役だけをパートナー会社エニグマに委託している、そんな構図が想像できてしまう。
(現実には株式会社悪の秘密結社という会社がある。
ヒーローショーなどの悪役を請け負う会社。これをパロったのがモティラースなのではないか。)
支離滅裂ギャグに見えていた諸々が、エンタメを仕掛ける人達の、アイドルと大人の職業日常モノとしての手触りをはっきりと持ち始める。
ほら、過去の季節物ストーリーとあわせて、読み返してみようかなという気になるでしょう。
こんな妄想がライターの意図した正解かどうかはわからないけれど、こんなふうに視点の変化をもたらし、深入りするするだけのリアリティを与えてくれるきっかけ。それが今回の場合マジスクなのだ。
ゲームの未来とか理想の話
先週こんな記事を書いた。
グランメゾン東京が面白すぎる
tomatojuicer222.hatenablog.com
普通は減点をなくすためにやるはずの「細部へこだわる」という作業。演技力とか料理のクオリティとか。それを圧倒的なレベルで、閾値を超える所まで貫いた事で、単なるこだわりを超えてストーリー的な面白さを担うまでに昇華しているよね。要約するとそんな感じの感想文。
この記事の結びの一節として、こういう王道なエンタメ作りをゲーム業界もできるといいよねという事を書いた。
それを今回黒ウィズがやった。
チェリーさんの初登場から数年、寝かせに寝かせた本編で、ストーリーとは別軸の演出の力で面白さを作ってみせた。
これ作るの超大変だと思うんですよ。お金をかけてもそうそうできることではない。
監督の頭の中にしかないセンスとか面白さの種みたいなものを、チームの面々が汲み取り、形にしていくというのも難しいところだと思います。1人の才ある監督と、その理想を形にしていくクリエイター。うーんドラマになるな。
エンタメの理想みたいなものを考えはじめたほんの翌週に、僕自身がゲーム業界に入るきっかけにもなった、ずっとプレイしている推しゲーがそれをやった。
こんなに嬉しい日はなかなかないよね。良いイベントでした。たぴたぴ、ごちそうさまでした。